埼玉県小川町の変成岩類

座学に飽き,また自分には露頭で岩相を判定するための経験が足りていないこともあるので,タイトルにもある通り埼玉県小川町で見られるという変成岩類を観察してきました.

緑色岩,変斑糲岩,変玄武岩,角閃岩,蛇紋岩など変成岩類や跡倉層の岩石が見られました.

なかでも角閃岩については、竹内・牧本(1995)でHornblendeのK-Ar年代測定(402±20 Ma)が行われ,黒瀬川構造帯に対比されています.

宮下ほか(2016)は,角閃岩中のジルコンからU-Pb火成年代~480 Maと角閃石からK-Ar変成年代~430Maを得ています.

いずれにしろ本角閃岩は,今のところ埼玉県内で最古の年代を持つということが分かっています.

露頭

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変斑糲岩体の露頭

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蛇紋岩体もしくはアクチノ閃石岩の露頭

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角閃岩体の露頭

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角閃岩

採取した岩石

採取した岩石を切断研磨して水で濡らして見やすくしました.

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塩基性岩①

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塩基性岩②

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角閃岩①

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角閃岩②

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角閃岩③

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角閃岩④

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蛇紋岩に見えたが剪断の強いアクチノ閃石岩?

薄片の写真

塩基性

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塩基性岩の薄片(左:オープンニコル,右:クロスニコル)

牧本・竹内(1992)によれば,変玄武岩はアルカリ角閃石,緑泥石,曹長石の石基と少量の苦鉄質な鉱物の斑晶から成り,変斑糲岩はソーシュライト化した斜長石と一部淡緑色の角閃石に置換された単斜輝石から成るそうです.変斑糲岩でしょうか?

角閃岩①

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角閃岩①の薄片(左:オープンニコル,右:クロスニコル)

細粒の斜長石と緑色の角閃石が見られ,斜長石は波状消光を示しています.

角閃岩②

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角閃岩②の薄片(左:オープンニコル,右:クロスニコル)
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角閃岩②の薄片(左:オープンニコル,右:クロスニコル)
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角閃岩②の薄片(左:オープンニコル,右:クロスニコル)

 角閃岩②は採集した角閃岩の中でも肉眼で識別できる角閃石の定向配列が認められたもので,薄片でも粗粒な角閃石が認められました.斜長石は波状消光を示します.非常に美しかったので6枚の写真を貼っています.

 

(参考文献)

牧本博, 竹内圭史. 寄居地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅). 地質調査所. 1992.

竹内圭史, 牧本博. 関東山地跡倉ナップ,緑色岩メランジュ中の角閃岩岩塊のK-Ar年代. 地質調査所月報. 1995, vol. 46(8), 419-423.

宮下敦,堤之恭,佐野貴司. 関東山地古生代前期木呂子角閃岩の年代学 地質学雑誌. 2016, 122(10), 511-522.

 

※2021/02/04 内容改訂