領家帯のコートランダイトを薄片にしてみた

最近、久しぶりに岩石薄片に感動させてもらいました。

かんらん岩を薄片にしたことのある人なら恐らく分かって貰えると思いますが、美しい薄片には学術的価値以前に、人知の及ぼぬ神秘さがあります。

 

ということで、今回の岩石薄片は、長野県領家変成帯の花崗岩質深成岩にともなって産出する「コートランダイト」の薄片です。

コートランダイト (cortlandite) は、かんらん岩の変種です。その最たる特徴は、大きな角閃石 (主晶) が比較的細粒のかんらん石や輝石類、斜長石 (客晶) を取り囲んだ組織「ポイキリティック組織」を示す点にあります。

このような組織は、基本的には鉱物のマグマからの晶出順序を反映しており、客晶が後から大きく晶出・成長した主晶に包有されることで形成された組織、と第一近似的には考えることができます。

 

何はともあれ、実際の薄片写真をば。

平行ニコル
薄茶色の鉱物が角閃石。丸っこくて浮きあっがて見える(高屈折率)の鉱物がかんらん石。

直交ニコル
上写真と同一視野。

かんらん石のコロコロとした外形の愛くるしさや直交ニコルでの干渉色の美しさは言わずもがな、控えめな斜長石や角閃石の干渉色と屈折率が絶妙なコントラストを生み出しており、筆舌に尽くしがたい美しさを織りなしています。

ほとんどがかんらん石から成るかんらん岩も、それはそれでステンドグラスのような芸術的美しさがありますが、個人的にはコートランダイトのような、他の主成分鉱物のなかにあたかも散りばめられているようなかんらん石に特別な魅力を感じます。

以下さらに薄片写真を掲載します。

平行ニコル

直交ニコル

かんらん石の形状と干渉色はさもM&M‘sチョコレートのよう。

連晶組織も見られ、形成条件が気になるところです。

平行ニコル

直交ニコル

自形面の出るかんらん石。

そのほかにも、コートランダイトには直方輝石や単斜輝石、斜長石が含まれています。

直方輝石(中央)・斜長石・角閃石・かんらん石
直方輝石 (中央部) は屈折率が高い割にバイレフリンゼンスが低く、また劈開に対して直消光する。
斜長石
短冊状の組織は「集片双晶」。
斜長石
角閃石を包有する。
連晶組織
スピネル (Helcynite)
Poikilitic hornblende

結晶質な深成岩でしか味わえない小宇宙を堪能することができました。