長閑な比企の山間の川底に、人知れず青みを帯びた岩石が顔をのぞかせています。 川の水を掛けてみるや否や、たちまち藍染を彷彿とさせんばかりの、目覚ましい群青色を帯びるこの岩石こそ、言うまでもなく青色片岩です。 関東山地東縁には、中生代白亜紀のプ…
三波川変成帯で産出する変成岩のひとつに「点紋片岩」という岩石があります。 スポット状に大きく成長した曹長石がまだら模様のように散りばめられたこの岩石は、野外でも一際目立ち、その神秘的な風貌は多くの人を魅了してきたことと思われます。 変成度や…
薄っすらと秋の影が感じられるようになった8月の終わり頃に訪れた巡検先の記録です。 国内に多数ある普通輝石の産地のなかでも特に有名な、長野県南牧村の平沢峠周辺の火山岩を観察しに行きました。 八ヶ岳を望む眺望 普通輝石の自形単結晶を簡単に採集でき…
三波川変成帯と対をなす白亜紀の領家変成帯には、おなじみの珪長質な花崗岩質深成岩や、以前記事にした苦鉄質深成岩 (コートランダイト質斑糲岩など) のほか、砂岩や泥岩を原岩とする高温低圧型の広域変成岩が産出します。 今回はそのうち泥質片麻岩である黒…
宅地造成やゴルフ場造成などの土地開発によって貴重な岩石・鉱物の産地が意図せず廃れてしまうことは、残念ながらしばしばあるようです。 かつて灰クロムざくろ石 (uvarovite; Ca3Cr(III)2Si3O12) の産地として名高かったという、埼玉県越生町西和田付近に分…
今回の岩石薄片は前々回の記事とおなじく、高知県中北部を流下する汗見川で採取した変成岩、紅簾石石英片岩です。 (なお、本記事でも含Mn緑簾石/紅簾石問題には立ち入りません。) calcho.hateblo.jp 実は前々回の紅簾石石英片岩は転石ですが、今回は露頭採取…
最近、久しぶりに岩石薄片に感動させてもらいました。 かんらん岩を薄片にしたことのある人なら恐らく分かって貰えると思いますが、美しい薄片には学術的価値以前に、人知の及ぼぬ神秘さがあります。 ということで、今回の岩石薄片は、長野県領家変成帯の花…
プレート沈み込み帯での低温高圧下で形成された変成岩は、紅色や藍色、緑色とカラフルな産状を示すことがしばしばあります。 それら岩石の薄片の偏光顕微鏡観察をおこなうことで、発色の原因となっている鉱物を同定することが可能です。 とくに、埼玉県長瀞…
今回は3年前に訪れた、関東山地東縁の嵐山渓谷で採取した泥質片岩 (黒色片岩) の薄片を作りました。 というのも、岩石試料を整理していたところ、他の試料にくらべてあまりにもサンプルが黒かったため、含有鉱物をこの目で確かめておきたかったからです。 埼…
秩父鉱山の中でも渦の沢に次ぐ(?)知名度を持つ石灰沢では、ざくろ石スカルンが沢山採れます。美しいベスブ石も簡単に採集することができます。 今回はこの石灰沢で拾ったスカルン-閃緑岩境界、すなわち接触変成境界の岩石と思われる岩石薄片です。 サンプル…
渦の沢ーランドといえば燐灰石ですが、もっと普通に現れる「灰鉄輝石」の薄片を作ってみたところ、大変綺麗でした。 左:PPL 右:XPL かなり新鮮。 左:PPL 右:XPL 結晶外縁部に向けて累帯構造が見られる。 左:PPL 右:XPL 微細な包有物をたくさん含む。 …
なかなか巡検に気軽に行けるようなご時勢でもないので,家にある岩石の研磨標本をプリンターのスキャン機能を使って画像ファイルにしてやりました.薄片の写真は全て過去に記事にしています. どれも今年の前半に一人で採りに行ったもので思い入れもあるので…
出合~ニッチツ鉱山までの4 kmほどの道にはいくつかのトンネルがあります。 先日この道を歩き倒したので、目印にもなるこのトンネルたちを地図上に書き留めておきます。 出合~ニッチツ鉱山までの5つのトンネル ⑤の雁掛トンネルは上のトンネルたちの中でも最…
つくばに行く用事があったので、ついでに茨城県つくば市にある地質標本館に行ってきました。 つくば駅から産総研構内への無料のバスが出ているのでそちらを利用するのが良いでしょう。 茨城県にあるということもあってか、花崗岩推しがもの凄いです。 ペグマ…
久々に薄片を作りました。 有名な東赤石山の橄欖岩の薄片です。 サンプル 全長約800 kmにも及ぶ三波川変成帯のなかで、マントル物質が唯一広範囲に纏まって露出しているのが、四国地方中央部の別子地域です。 周囲にはエクロジャイトという高圧変成岩も露出…
顕微鏡室の棚を漁っていたら,面白いものを見つけました. どうやら20年前の巡検で採取した三波川変成帯の変成岩の薄片みたいです. 実際に顕微鏡で見てみるとたいへん綺麗だったので載せておきます(載せるだけです). 泥質片岩 石英,白雲母,緑泥石,ざ…
たびたび秩父鉱山の岩石の薄片を作っていますが,今回は先々週訪れた渦の沢で採ってきた石の薄片です. 3回目の今回の試料は,新第三紀に秩父帯の岩体に貫入し,秩父鉱山の大規模な接触交代鉱床を形成したとされる,トーナル岩です. トーナル岩は,石英と斜…
個人的なメモです. 百分率(%) 角度(°) 摂氏温度(℃) 化学式 太字のベクトル表記 ギリシャ文字の太字 図の挿入 図の挿入(3列) 数式と図の番号 百分率(%) パッケージ使用:\usepackage{textcomp} \% 角度(°) パッケージ使用:\usepackage{textcomp}または\…
埼玉県飯能市上名栗を源流とし,県南部を凡そ東西に流れる入間川が関東山地を抜け平野へと出ると,河床には更新統以降の地層も広く見られるようになり,そこには様々な地質学的事象の痕跡が見られます. 「笹井化石林」は,入間川中流域の狭山市西部笹井地域…
先日天気が良さげだったので,半年ぶりに秩父鉱山に行ってきました. 前回と同じく,渦の沢→出合の河原の動きを予定していたのですが,おそらく昨年の台風19号の影響で渦の沢の様子がだいぶ変わっていて沢山収穫があったため,渦の沢のみとなりました. 麓 …
座学に飽き,また自分には露頭で岩相を判定するための経験が足りていないこともあるので,タイトルにもある通り埼玉県小川町で見られるという変成岩類を観察してきました. 緑色岩,変斑糲岩,変玄武岩,角閃岩,蛇紋岩など変成岩類や跡倉層の岩石が見られま…
先日多摩川沿いで貝化石を採集してきました. 連日の晴天と少雨もあって,予想通り水量は少なかったです. JR立川駅から徒歩20分ほどの多摩川沿いに産地はあります. JR中央線の鉄橋と立日(たっぴ)橋の間の多摩川右岸には,上総層群の連光寺層が分布しており…
関東地方に住んでいる方は,三波川帯の結晶片岩と言えばまず長瀞を思い浮かべることでしょう. ところがいざ採集して薄片にしようと思ったときに,長瀞の結晶片岩が存在するエリア(親鼻橋~高砂橋)は国指定名勝・天然記念物となっており,そもそもそれが出来…
前回の記事の翡翠輝石石英岩を採取したついでに,小川町にある金勝山に寄って石英閃緑岩を採取しました. 金勝山石英閃緑岩体は三波川帯の上に載る跡倉ナップの一部と考えられ,石英閃緑岩中の角閃石のK-Ar年代は251±8 Ma(ペルム紀と三畳紀の境界あたり)と…
先日埼玉の翡翠輝石石英岩が見られるということで有名な場所に行ってきました. 例のごとく薄片にしてやりました. サンプル 左:オープンニコル,右:クロスニコル. 上の2枚:Jadeite+Quartz Jadeiteの鑑定の基準は以下. 屈折率:1.640~1.673(バイレフ…
斜方輝石(直方輝石)は、屈折率が高い割にバイレフリンゼンスが低いのが特徴。また、たいてい劈開に対して直消光する。 これに対し、単斜輝石のAugiteは高バイレフリンゼンス、たいてい斜消光をする。 たびたび忘れるので,大学の薄片をお借りしてメモってお…
岩石薄片が増えてきたので,整理するために薄片ケースを購入しました. 中身(入れてある薄片は初めて作ったときの失敗作です...かなり擦り飛ばしてショックでした) ネットの情報が少なかったので,購入したケースの情報を. www.matsuyoshi-online.jp 収納…
先日時間が空いたので,埼玉県飯能市のとある凝灰岩層を見てきました. 場所はこちら↓ 矢颪凝灰岩層の分布 飯能層と呼ばれる主に礫から成る地層の下部にある,矢颪(やおろし)凝灰岩(部)層です. 植木・酒井(2007)によるジルコンのフィッショントラック年代の…
そういえば,この間(だいぶ前)の秩父鉱山で良いものが採れました。 渦の沢産の燐灰石+灰鉄輝石(Apatite+Hedenbergite)です。 薄片にするにはあまりにも勿体無いので大事に飾っておきます.
前回に引き続き,秩父鉱山(渦の沢)で拾った同じスカルンの薄片を作成しました. 成形した石 以下,薄片の写真です.(スケールは省略) 左:オープンニコル,右:クロスニコル 左上に方解石が,中心に不透明鉱物(おそらく黄鉄鉱)とそれを取り巻く石英とざ…