三波川変成帯と対をなす白亜紀の領家変成帯には、おなじみの珪長質な花崗岩質深成岩や、以前記事にした苦鉄質深成岩 (コートランダイト質斑糲岩など) のほか、砂岩や泥岩を原岩とする高温低圧型の広域変成岩が産出します。
今回はそのうち泥質片麻岩である黒雲母–菫青石片麻岩の薄片の紹介です。
岩石スケールでは主に珪長質な層が織りなす片麻状組織と、顕微鏡下では比較的等粒状に近い組織を示します。
以下、薄片の写真です。
偏光顕微鏡を用いた鉱物同定の初学者を苦しめるような構成鉱物種が共存します。
黒雲母と不透明鉱物は区別できるとしても、菫青石 + カリ長石 + 石英の区別は決して容易ではありません。実際には光学性や屈折率、特徴ある組織を手掛かりに同定します。
黒雲母の同定は容易です。(有色鉱物、多色性、直消光)
菫青石はとくに平行ニコル下では石英と区別しづらいですが、光学性が二軸性負であることや、やや青みがかっていること、花弁状双晶や集片双晶をなす点で異なります。またこの岩石の場合細粒な不透明鉱物を包有する点も手掛かりになります。
カリ長石も菫青石とおなじく石英と区別しづらい鉱物ですが、光学性のほか上の画像で横方向に入る離溶ラメラ (パーサイト) がひとつ手掛かりになります。
今回の黒雲母–菫青石片麻岩は白雲母が入らない一方で微細な珪線石が入っており、
のようにグラニュライト相に近い高温条件で白雲母が脱水分解したことがわかります。