薄っすらと秋の影が感じられるようになった8月の終わり頃に訪れた巡検先の記録です。
国内に多数ある普通輝石の産地のなかでも特に有名な、長野県南牧村の平沢峠周辺の火山岩を観察しに行きました。
普通輝石の自形単結晶を簡単に採集できる、非常に有名な産地ということもありネット上には多くの採集記が転がっています。
様々な双晶を観察できるだけでなく、最大約1 cmの粗粒な結晶も探せば見つかります。
以下、岩石の紹介です。
本露頭は八ヶ岳の東方に位置する飯盛山 (めしもりやま; 1643 m) 麓にあります。飯盛山自体は新生代新第三紀鮮新世の飯盛山火山岩類 (河内, 1977) からなり、安山岩質な火山岩から構成されています。
普通輝石の粗粒自形結晶が含まれる岩相は同論文で平沢スコリアとして飯盛山火山岩類からは区別して分類されており、降下スコリア堆積物として記載されています。露頭ではパン皮状火山弾など不均質な構造を多数観察できます。
鉱物採集のついでに普通輝石を多く含む母岩の転石を採集し、薄片化してみました。
普通輝石の双晶と累帯構造が確認できます。普通輝石内部には磁鉄鉱が多く含まれています。斑晶鉱物はほぼ普通輝石と斜長石によって構成されており、直方輝石やかんらん石、石英は見つかりません。また茶色の火山ガラスが明瞭に認められます。
斜長石にも光学性の違い (~化学組成の違い) に由来する累帯構造と微細な包有物が規定する累帯構造の2つが観察できます。
産地には鉄道と無料バスのみで行くことが可能です。中央本線の早朝ダイヤの名物列車、八王子発・普通松本行 (429M) は特におすすめで、首都圏ではもはや見ることのなくなった211系や笹子トンネル、日野春での特急通過待ちの長い停車時間、地方の朝方の通勤通学の空気感など、時間を忘れて非日常を楽しめます。
大月までは富士山方面に行く人で座席が埋まる程度には混んでおり、そこから甲府までは通勤通学の利用が増加しますが、それ以降はほとんど乗客がいません。ぜひ利用してみてはどうでしょうか。