三波川変成帯で産出する変成岩のひとつに「点紋片岩」という岩石があります。
スポット状に大きく成長した曹長石がまだら模様のように散りばめられたこの岩石は、野外でも一際目立ち、その神秘的な風貌は多くの人を魅了してきたことと思われます。
変成度や変形の定性的指標にもなることから、三波川帯研究では古くから注目されてきました。
点紋片岩の原岩が玄武岩質なものであればこのようなゴマダラ模様の塩基性片岩として産出することになりますが、原岩が泥質であると曹長石には炭質物の包有物が多量に含まれ、いわゆる黒色片岩などとして産出します。
今回は、鏡下でも大変美しいこの「点紋片岩」の薄片の紹介です。
毎度のことながら、標本は高知県の汗見川沿いで採集しました。汗見川まで遡上せずともこの地域には吉野川沿いに手のひらサイズの点紋片岩が無数に転がっています。
以下、面構造に垂直・線構造に平行な薄片の画像です。
構成鉱物は石英、曹長石、緑簾石、普通角閃石、ルチルととても単純です。
曹長石には微細な緑簾石や石英などが無数に包有され、それらが内部面構造を規定しています。結晶内側ではほぼ直線的な内部面構造は、周縁部で急角度で湾曲する傾向があります。
石英は曹長石のプレッシャーシャドウに存在する場合がほとんどで、基質の他の部分にはあまり存在しません。
普通角閃石は板状に細長く成長しており、これもまた美しい多色性を示します。
毒々しいと評される緑簾石の干渉色もここでは極彩色を奏しています。