埼玉県飯能市上名栗を源流とし,県南部を凡そ東西に流れる入間川が関東山地を抜け平野へと出ると,河床には更新統以降の地層も広く見られるようになり,そこには様々な地質学的事象の痕跡が見られます.
「笹井化石林」は,入間川中流域の狭山市西部笹井地域の農業用水堰の笹井堰下流に分布する,上部更新統の植物化石が多産する場所です.笹井堰下流ではメタセコイア株やその種子,オオバタグルミなどの植物化石が産出したために,詳しい研究がなされてきました.
笹井化石林が属する仏子層は鮮新世後期~更新世前期に陸~浅海・汽水域環境で堆積した主にシルト層から成る地層で,入間市牛沢に見られる貝化石層や,西武池袋線入間川鉄橋下に見られるアケボノゾウ足跡化石,狭山市笹井で発見されたアケボノゾウの化石で知られています.
今回は,この笹井化石林の状況が昨年の台風19号の前と後とで一変していたので,写真とともに載せておきます.
台風19号の前の様子(2019/05/26)
河床にはシルト層とそれに含まれる黒い植物化石・琥珀などが見られました.
台風19号通過直後
化石林は水没しています.
台風19号の後の様子(2020/02/03)
台風の通過前に水深が深く仏子層のシルト層が見られた場所は堆積物で埋められ,逆に相対的に水面からは高かった場所の堆積物は削剥され仏子層のシルト層が見られるようになっていました.その結果,対岸の入間市黒須へと歩いて渡れるようになっていました.
また,新たに仏子層の露頭が広く現れていました.