先日多摩川沿いで貝化石を採集してきました.
連日の晴天と少雨もあって,予想通り水量は少なかったです.
JR中央線の鉄橋と立日(たっぴ)橋の間の多摩川右岸には,上総層群の連光寺層が分布しており,青灰色のシルト層が広がっています.
連光寺層の年代は約130万年前と報告されています(植木・酒井, 2007).チバニアン(77.3~12.6万年前)の一つ前の地質時代のカラブリアン(180~77.3万年前)の地層と考えられます.
上の2枚の写真に写る白い物体はすべて貝化石です.昨年訪れた,和泉多摩川の飯室層の貝化石群集よりもはるかに産出量が多いです.
ボツボツと至る所に空いている穴は生痕化石でしょうか.
以下で採集できた貝化石を紹介します.二枚貝の多くが保存状態が良好で合弁の状態で採取できました.
エゾタマガイはC字型の臍盤が特徴です.
アカニシは多産することに加え,殻が硬く採取の際壊れにくいために非常に簡単に採取できます.採取したものはすべて右巻きでした.
ツメタガイはエゾタマガイと紛らわしいです.
カガミガイはアカニシ同様多産し,さらに殻が分厚く壊れにくいのでこちらも合弁の状態を簡単に採取できます.右の写真は,左の3個体の中央の個体の内側です.
上の2枚は同定出来なかった二枚貝の化石です.15 cmほどの大きな個体で採取したのですが,バラバラになってしまいました.3つの破片のうち一番左側の破片の形態が同定のポイントになりそうですが....
今回貝化石を採取した連光寺層ですが,少し多摩川を遡ると下の層準に当たる小山田層が分布しており,そちらでも貝化石が報告されています.
多摩地域の多摩川流域は更新統の地層が断続的に広く分布していることもあり非常に勉強になる場所でした.
最近は硬い石ばかり扱っていたので,いい気分転換(?)にもなったかと思います.
(参考文献)
植木岳雪, 酒井彰. 青梅地域の地質. 地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅). 産総研地質調査総合センター. 2007.
馬場勝良. 関東平野西縁部の下部更新統上総層群の貝化石群集と環境変動
―地学の野外実習教材開発の基礎として―. 聖徳学園大学紀要〈教育学部編〉. 2015. vol. 54, 65-87.