先日時間が空いたので,埼玉県飯能市のとある凝灰岩層を見てきました.
場所はこちら↓
飯能層と呼ばれる主に礫から成る地層の下部にある,矢颪(やおろし)凝灰岩(部)層です.
植木・酒井(2007)によるジルコンのフィッショントラック年代の測定では,2.5±0.1 Ma(Ma=百万年前)との年代が出ています.
飯能層自体の傾斜角が非常に小さいため(~9°NE),凝灰岩層の層厚に対して非常に長く分布しています.ラミナが発達し,時折泥層を挟んだりしています.
矢颪凝灰岩層の基底のすぐ下の層には,直径15 cmほどまでの大小の円礫が混じる層があり(下の写真),そこに含まれる風化花崗岩質礫はその起源を奥多摩の三頭山花崗岩や甲府花崗岩体に持ちます.(加賀美・谷口,1997).
風化花崗岩の薄片を見たことが無かったので,それっぽい花崗岩質礫を(何となく)持って帰って薄片にしてみました.
薄片にする礫試料はこちら.激しい風化の影響で表面は脆くて崩れやすく,いわゆる「くさり礫」です.
ボロボロで軽石質の凝灰岩にも見えました.
薄片は礫のど真ん中あたりから切り出したチップから作りました.以下は薄片の写真です.(スケールは省略しています)
上の2枚には石英や緑泥石,風化してボロボロになっている斜長石が映っています.
上の2枚には黒雲母が変質した緑泥石を撮ったものです.やはり黒雲母は見当たりません.アルカリ長石もほとんど見当たりませんでした.
どうやら持ち帰った花崗岩質礫は石英閃緑岩が風化したモノのようでした.
この層準からは化学組成上起源が不明な花崗岩質礫も採取されたことがあるようで,非常に気になります.
(参考文献)
植木岳雪・酒井彰, 青梅地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅), 産総研地質調査総合センター, 2007, 59-61p.
加賀美英雄, 加治丘陵の飯能礫層中のホルンフェルスの化学組成. 城西大学研究年報(自然科学編). 1997, vol. 21, 11-33p.